エリヤフ・ゴールドラットによって書かれた「ザ・ゴール」。
ここで紹介された制約理論(TOC、Theory of Constraints)は、営業戦略にも応用できます。
このことをゴールドラットの教え子が、著者さながらの小説ストーリーで書いたのが「ザ・キャッシュマシーン」です。
本記事では、ザ・ゴールで登場した全体最適やTOC(制約理論)をどのように営業領域に適用できるのかエッセンスを簡潔に紹介します。営業やマーケティングの課題に取り組まれている方が、エッセンスを短時間でキャッチアップすることを目的に書いています。
「ザ・キャッシュマシーン」のエッセンスを、短時間でキャッチアップすること
TOC(制約理論)とは何か
制約理論とは、物事の制約条件を継続的に改善することで企業のパフォーマンス向上を目指すものです。
理論の提唱者はイスラエル人のエリヤフ・ゴールドラットです。
「ザ・キャッシュマシーン」のあらすじ
グラフィック系技術、プリンター、スキャナー技術を持つCGS社の販売課題をTOCの考え方で解決するビジネス小説です。主人公が2年間かけて、営業パフォーマンスを向上させ、マーケティング本部長→営業本部長→と駆け上がっていくストーリーです。
キャッシュマシーンとは何か
本のタイトルにもなっているキャッシュマシーンとは、主人公が自社のプロセスを4つにまとめた時のプロセスの一つです。
CGS社の業務プロセス
- 生産
- 研究開発、あるいはエンジニアリング
- 実際に現金を生み出すプロセス(キャッシュマシーン)
- 顧客サービス
主人公のロジャーは最初は実際に現金を生み出すプロセスと呼んでいたものをコンサルタントのバリーがキャッシュマシーンと名づけました。
キャッシュマシーンは
- マーケティング
- 販売
- 注文管理
- 経理(請求、回収)
- 顧客サポート
と多くの機能や部門にまたがり、責任が分散しているところが特徴です。
見込み客から注文までをじょうご(ファンネル)にみたてて管理したファンネル管理やパイプライン管理はこの一部です。
注文を受けてからインストールなどの導入も終えて顧客からの入金を得るところまでがキャッシュマシーンです。
TOCの応用シーン
ストーリーの初期の段階でボトルネック解消を図るシーンは登場します。
ステップ1の顧客選択がネックの時は営業部員や代理店の数を増やすことで解決。
これを解決すると、提案後のステップ7 デモ が新たなネックとして顕在化します。
一日にできるデモの数を増やすためにあらゆる手を講じます(制約条件の徹底活用)。業務時間増、シフトや担当変え、プレゼンのうまいスタッフ、管理のうまい者の活用。
制約条件を活用したうえで、今度はデモできない分のステップ1や2は行わないことにします(制約条件に全てを従属させる)。
オーダー承認というボトルネックの解消
次々と改善を重ねた結果、今度のボトルネックは納品です。プロセス全体をみていくと、オーダー承認に時間がかかっていることがわかりました。
地区の営業マネージャー、地域の総括マネージャー、製造マネージャー、経理部長、営業本部長のロジャー、CFOのエリザ。マージンが30%未満のときは社長承認も必要。
途中で止まると一週間以上放置されることもあるようです。
ここでは、対立解消図(雲、クラウド)を使い能率的な販売業務を行うための方法を導き出します。
マージンが少ないオーダーは承認後の事後対応をとることと、信用に難がある顧客はブラックリストで対応することになりました(顧客全体の1%ということもわかり、進められそうな見通しが立ちました)
期末症候群の解消
夏休みの最終日に宿題に追われる問題は学生症候群と呼ばれます。
営業における期末症候群は、四半期末のノルマ達成です。
この問題をロジャーとバリーは、現状問題構造ツリーを書いて紐解きます。UDE(好ましくない結果)の因果関係を整理し、根本的な原因が四半期ごとの報奨プランにあることを特定します。
そしてすでにTOCで課題を克服した経験のある研究開発部門のロンの知見を借ります。そしてプロジェクトバッファーへの集約するというパラダイムシフトを実現します。
プロジェクトにおける完了予定日を、営業では売上金額に置き換えたのです。
キャッシュマシーンの制約条件はいつか市場になる
ロジャーとバリーの終わりなき改善は、ついに社内を超えた制約条件にぶちあたります。
営業本部長の職掌も超え、会社全体のプロセスに手をつけます。
また、期末症候群の解消は思わぬところに効果をもたらします。オーダーが平準化されることにより、製造部門が大感謝したのです。
終わりに
ザ・ゴールや他のゴールドラットシリーズを読まれた方には本書のテンポの速さは驚くかもしれません。
また、解決方法をスムーズに理解するには、TOC理論を知っておくことをおすすめします。
▼TOC理論を知るのにおすすめの本
販売物流領域は多くの部門が関係するため改革の難易度は非常に高いです。
とはいえ本書のストーリーを頭の片隅に置いておくことはきっと改革の道標になると思います。
参考記事
実際の販売・物流管理の業務について知るには、以下の記事で紹介している本がおすすめです。
強い営業組織をつくるための5つのマネジメントについて書いています。
キャッシュマシーンは全体に関わりますが、特にレベニュー&プロフィットマネジメントの部分の骨格になります。