経営戦略全史~濃厚な戦略論の歴史が軽快な冒険活劇に

経営戦略全史~濃厚な戦略論の歴史が軽快な冒険活劇に

大事と感じつつも、とっつきにくい経営戦略

戦略って大事ですよね。

特に仕事と経営戦略って切り離すことはできません。

自身の仕事は自社の経営戦略から落とし込まれて組み立てるものですし、取引先の経営戦略とも整合しながらよりよい関係を築いていくことが求められます。

しかし、あなたの会社の戦略について説明して下さいと言われると、うまく説明できないどころか、キーワードすら思いつかないことも珍しくありません。

文句のほうが思いつきやすいかもしれません。

  • キーワードだけで具体性がない…
  • 年始に社長から話があるだけで日々の仕事には関係ない…
  • 毎年ころころ変わる…

経営戦略のとっつきにくさは、わかりやすい言葉で書かれたものが少ないことも一因です。

Wikipediaによると「経営戦略は組織の中長期的な方針や計画を指す用語」とあります。ふわっとした表現です。

以下記事にもあるように、経営戦略には様々な定義が乱立しています。こうした多様性もまた、難しさを助長します。
「経営戦略」をいかに定義するか(ハーバードビジネスレビューWeb

経営戦略は極めて広範な学術分野であり、経営に携わるすべての人間が、何らかの関わりを持つと言える。そのため驚くべきか驚かざるべきか、それを一言で表そうとしたとたんに、多様な表現が提示される

本記事では、この複雑でとっつきにくい経営戦略をわかりやすく料理した「経営戦略全史」という本を紹介します。ビジネス書対象2014で大賞、ハーバードビジネスレビュー読者が選ぶベスト経営書2013で第1位を受賞した人気の書籍です。

戦略とは、旅行の計画で考える最短ルートのようなもの

「あたらしい戦略の教科書(酒井穣)」では、戦略を旅行の計画に例えています。

戦略は、現在地と目的地を結ぶ最適ルートである

これにもとづくと、戦略立案のステップは以下の3つです

  1. 現在地を明らかにする
  2. 目的地を明らかにする
  3. 現在地と目的地を結びつける方法(=戦略)を考える

経営戦略の難しさは、日々現在地が変わっていくうえに、状況によって目的地も変わり、それにより最適なルートも変わるところにあります。

企業規模が大きくなると、現在地や目的地も立場によっては見え方が変わってくるのも難しさを生みます。

経営戦略は企業を現在地から目的地まで結ぶ最適ルートのことである。ここを共通理解として次に進めます。

戦略をシンプルに表現した島田紳助「X+Y」の公式

企業の目的地はどこでしょうか。

企業活動をシンプルに表現すると、顧客に商品(サービスも含む)を提供することです。

この表現を使うと、目的地は「顧客が欲しい商品を提供できていること」になります。

現在地は、「自社が商品を提供できている顧客や、自社が提供できる商品」です。

現時点で必ずしも欲しい顧客に提供できているとは限りませんし、顧客の欲しいものは時間とともに変わっていきます。

これをうまく表現したのが、島田紳助の「X+Y」の公式です。

紳助は、X」は自分の能力、「Y」は世の中の流れ。自分が何をしたらいいのか、どうしたら売れるのか、そのためにどういう笑いをつくったらいいのか。

これらは「X」と「Y」がわかってから初めて悩むべきだと言います。

まず取り組むべきなのは、自分自身と向き合って必死に探して「X」を見つけること。世の中を徹底的に研究・分析して「Y」をとらえること。

自分たちの「X+Y」がわからないままどれだけ練習しても時間の無駄だと、NSC(吉本興業の養成所)の若者を諭します。

紳助の公式に経営戦略全史をあてはめると

経営戦略全史では、100年の歴史を大きく3つの流れに分けています。

  1. フレデリック・テイラーの定量的分析を源流に持つポジショニング派
  2. エルトン・メイヨーの人間的議論を源流に持つケイパビリティ派
  3. 臨機応変に対応する試行錯誤アプローチ

ポジショニング派は「Y」にあわせる戦略、ケイパビリティ派は「X」に合わせる戦略です。

試行錯誤アプローチは、状況にあわせていいとこどりをしようという戦略です。

この大きな流れを押さえておくと、経営戦略全史はぐっと読みやすくなります。

さらに、この本には、膨大な情報量を読者が楽しみながら咀嚼できるよう工夫も凝らされています。

この本に盛り込まれた「わかりやすさ」「楽しさ」への工夫

この本の著者は三谷宏治さん。BCG(ボストンコンサルティンググループ)やアクセンチュアを経て、現在は出版されたり教鞭をとられている方です。物事の本質をとらえわかりやすく説明するのが非常に上手です。

この本は従来の経営戦略史や解説書と異なり、「人」にフォーカスがあたっています。歴史を活き活きと描くために個人のエピソードや物語が重視されています。

そのため書籍の下部には顔写真、書籍の表紙、図表がふんだんに盛り込まれています。

また登場する人物を著者が仮想的に対談させるコラムも設けられており、戦略を論じた人物に親しみをもって読み進めることができます。

本を読んだら前より戦略を立体的に見えるようになった

私は、今回「なぜ良い戦略が利益につながらないのか」を読んだのをきっかけに、戦略論の学派に興味が出て再読しました。

【簡単まとめ】なぜ良い戦略が利益に結びつかないのか

時間を置いて再読すると新しい発見があるもので、2つ面白かったことを共有します。

フレームワークが立体的に見えるようになった

現在公式のように使われているフレームワークにも流行り廃りがあり、改良されていることを実感しました。

強み・弱みと機会・脅威を整理するSWOTマトリクスは外部・内部の環境を整理するのには役立ちますが、その先を考えるのには物足りません。

改良されたTOWSは現状の整理に加えて施策の案が出せますが、重みづけやトレードオフは見えません。それを補うべく競争環境を分析する5Forcesや、成長シェアマトリクスが出てきます。

また組織変革の検討に用いられるマッキンゼーの7S(Strategy, Structure System, Skill Style, Staff, Shared Value)のハードS(Strategy, Structure System)は、アンゾフ(1918-2002)の3Sの流れを汲んでいるようです。

BCGとマッキンゼーの違いを少しだけわかった気がした

BCGはテイラー源流のポジショニング派、マッキンゼーはメイヨー源流のケイパビリティ派を汲んでいます。

BCG創始者のブルースヘンダーソンは、有名な成長・シェアマトリクス(PPM、プロダクトポートフォリオマネジメント)に加えて、持続可能な成長の方程式、経験曲線という3つの革新を武器に、以下の3つを可能にしました。

  1. 時間予測
  2. 競争力の可視化
  3. 事業間の資源配分

一方のマッキンゼーは、優れた企業を表現し組織変革に利用できる7Sフレームワークを生み出したり、缶詰合宿でパートナー(共同経営者)を育成したりしました。

BCGは後々にも活用できる分析ツールや枠組みを強みとし、マッキンゼーは優れた人材の輩出を強みにしているように思います。

タイプ別におすすめの読み方

せっかく本記事で「経営戦略全史」に触れて頂いたので、おすすめの読み方を提案します。

積ん読されていた方へ

まずは買ってしまう気持ちも、そのまま積んでしまった気持ちも共感します。買おうと思った動機を原動力にしてはいかがでしょうか。本屋やアマゾンで目を引き購入に至る何らかの理由があると思います。自部署の戦略をもっと深く理解したかった、直接立案する立場にはないけど取引先の戦略を一緒に考えたい、など。

戦略を何に使いたかったのか今一度思い起こし、一番関係の深そうな章をまず眺めてみてはいかがでしょうか。

この記事で知った方へ

この記事をきっかけにお求めになった方は、初めから読み進めるのがよい気がします。
X+Yの公式を 経営理論の言葉で理解するには、流れに沿うのが近道です。

知ってたけど買わなかった方へ

読まないという選択肢、それもありだと思います。なんとなく重要そうだからとか、いつか役に立ちそうだからという理由で購入したり、漫然と読むのはもったいないです。その価値観にあった他のことに時間やお金を使うとよいと思います。

マンガ版(確立篇と革新篇の2分冊)を読む、という手もあります。マンガだから当然とっつきやすくなっていますが、結構吹き出しの文字が多いので、思っているほど速くは読めないかもしれません。

マンガ版もあります

マンガ版には、年表と主要人物リストが載っているのが嬉しいところです。どの時代に誰が生きていて、いつどんな著作ができたかは年表にまとまっているとわかりやすいです。

この記事が経営戦略全史を手にとるきっかけになればうれしいです。



このブログを書いている人

電子書籍「システム導入のためのデータ移行ガイドブック」著者。
新卒から外資系コンサルティングファームに所属。15年に渡り販売物流、特にCRM領域のコンサルティングに従事。
100名を超えるプロジェクトのPMOなど全体を推進していく役回りや、ユーザ企業への出向を通じた実務経験を持つ。

このブログでは、自身がかき集めた知識や経験を共有する。クライアントへの提案やソリューション開発に直結しないガラクタのようなもの。将来再利用する自分のために。同じような悩みを抱える誰かのためにブログ「外資系コンサルのガラクタ箱」を運営

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(最終更新:2018年2月7日)