戦略を日常の活動や習慣に浸透させる3ステップ

戦略を日常の活動や習慣に浸透させる3ステップ

本来戦略は実行するために立てるものですが、実行するはずの戦略を意識しなくなることは残念ながら珍しくありません。

これは立てられた戦略自体に問題があったり、ころころと変わる戦略や組織に対して現場が辟易している事情もあるかもしれません。

「なぜ良い戦略が利益に結びつかないのか」は、いかにして戦略を実行と結びつけるかについて書かれた本です。

本記事では、その中で私が最も重要だと考える、第3章「戦略を日常業務に落とし込む」を解説します。

1つの章で約70ページを占めますが、章の構造を押さえるだけでかなり見通しがよくなります。

同著全体のまとめ記事はこちら

ケイパビリティとは何か

ケイパビリティは直訳すると能力です。企業成長の原動力となる組織的能力や強みのことを指し、経営戦略を構成する上で重要な概念とされています。

書籍では、勝ち組企業は自社を差別化する少数(3~6くらい)のケイパビリティを経営の中心に置き、それらを巧みに融合させている、とあります。

ケイパビリティの例としては、イケアの空間体験型店舗デザインや、アップルのシームレスに機能するテクノロジーなどがあります。

戦略を日常業務に落とし込む3つのステップ

企業ごとに異なるアイデンティティやケイパビリティですが、立案した戦略を日常業務に落とし込むためのステップはシンプルに3つです。

  1. ケイパビリティ体系の青写真を作成する
  2. 特徴あるケイパビリティを構築する
  3. ケイパビリティ体系の規模を拡大する

ケイパビリティ体系の青写真を作成する

1つ目のステップでは、獲得したい成果を出発点に、ケイパビリティ体系の詳細を定義します。ケイパビリティ体系を精査するのに役立つ7つの問いが挙げられています。一連の問いに答えながら検討することで特徴ある自社ならではのケイパビリティを明確にしていくことができます。

  1. どのようなケイパビリティか
  2. なぜ価値があるのか
  3. 既存のケイパビリティとどのように違うか
  4. そのケイパビリティのある日常業務を表現する
  5. 機能させるために必要なものは何か
  6. ケイパビリティ体系における投資対効果とは
  7. そのケイパビリティは、ケイパビリティ体系の中で他のものとどうフィットするか

このステップであわせて実行計画も作成しておきます。

特徴あるケイパビリティを構築する

2つ目のステップは、明確にしたケイパビリティに命を吹き込むための3つのアクティビティを組み合わせて行われます。

  1. フォーカスを絞った介入
  2. ケイパビリティのイノベーション
  3. ケイパビリティを重視したM&A

 

経営者が現場に介入することは珍しくありません。しかし、顧客への価値提供に合致したものにフォーカスできていることは多くありません。資源は有限なので、どこまで絞り込めるかがポイントになります。

M&Aには、3つの型があり、応用型が一番成功するとされています。

  1. ケイパビリティ応用型(買収元のケイパビリティを買収先に応用)
  2. ケイパビリティ補強型(買収元のケイパビリティを買収先のケイパビリティで補強)
  3. 低フィット型(買収元と買収先でケイパビリティがフィットしない)

ケイパビリティ体系の規模を拡大する

  1. 最後のステップでは、2つ目のステップで確立したケイパビリティ体系を拡大していきます。規模の拡大はCEOの最優先課題として扱い、機能横断チームを設立し、常設組織として機能させることが重要です。
  2. 機能部門の境界を超える
  3. 暗黙知と形式知のバランスをとる

おわりに

紹介した3つのステップは書くとシンプルですが、簡単ではありません。時間も労力もかかりますが、参画する人々が企業のケイパビリティと自分の結びつきを肌で理解でき、企業文化の醸成にもつながり効果は大きいと考えられます。

このブログを書いている人
電子書籍「システム導入のためのデータ移行ガイドブック」著者。 新卒から外資系コンサルティングファームに所属。15年に渡り販売物流、特にCRM領域のコンサルティングに従事。 100名を超えるプロジェクトのPMOなど全体を推進していく役回りや、ユーザ企業への出向を通じた実務経験を持つ。

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