日本の未来を自動車にかけた先駆者の物語「LEADERS」

日本の未来を自動車にかけた先駆者の物語「LEADERS」

2014年3月にTBS系列で2夜にわたり放送されたドラマ「リーダーズ」を観ました。数々の自動車業界に関する本を読み話を聞いてきましたが、映像の威力はすごいです。4時間に及ぶ壮大なドラマを通じて、国産自動車開発と戦争の影、協調融資、労働争議などの歴史、そして自動車産業における工場と労働組合、部品メーカー、販売代理店などを知ることができました。

ストーリーのはじまり

自動織機会社の重役・佐一郎(俳優:佐藤浩市、モデル:豊田喜一郎)は、当時無謀ともいわれた国産自動車の開発に乗り出しました。社長からは道楽と揶揄されながら定時後を使い、外国から入手した自動車を分解し組み立てることから始め、自分たちで自動車を作れるよう試行錯誤を繰り返しました。

みどころ1:真っ黒になりながらエンジンの鋳造

歴史に詳しくないのでどこまでが史実でどういう脚色が加えられているのかはわかりません。しかしフィクションならではの演出もあり、大いに心を揺さぶられました。

まずは、太田耐介(俳優:緋田康人、モデル:大野耐一氏)が真っ黒になりながらエンジンの鋳造に取り組む姿が非常に印象的でした。大野氏と言うとどちらかというとジャストインタイムを具現化した理論家なのかと思っていたからです。

みどころ2:性能ではなく熱意を売るディーラー

次に、神田征太郎(俳優:神保悟志、モデル:神谷正太郎)がトラックを売るシーンが印象的でした。GM出身の彼の販売哲学は「一にユーザ、二にディーラー、三にメーカー」です。征太郎は佐一郎に、ユーザに親しみを持たせるために社名をカタカナにすることを提案します。

必ず故障することがわかっているトラックを売るシーン。日の出モータースでは、売り先を6社に限定します。国産車の志に共鳴してくれ、地元愛知の自動車を応援してくれる名古屋の企業に限定します。

少々の故障に目をつむって売ってくれる人でないと悪評につぶされる。不備が出たら即座にかけつけ修理する。その経験を重ねる中で、サービスや技術の向上を図っていこうとします。今ユーザに買って頂くのは、クルマの性能ではなくクルマに対する熱意と誠意だと言うのです。

朝までに荷物を神戸から出る船に乗せねばならないと詰め寄るユーザ。自動車は安全であり、ユーザにレジャーを提供するものでもありますが、商売の根幹を支える移動手段でもあります。

みどころ3:協調融資における日銀のワンシーン

山梨良夫(俳優:香川照之、モデル:高梨壮夫)は、金融引き締めの影響で苦境を迎えるアイチ自動車の救済に走ります。25の銀行を集めての協調融資会議のこと。

そこには佐一郎と石山又造(俳優:橋爪功、モデル:石田退三)がどうしても融資を受けたくないと伝えた西国銀行の児島支店長(俳優:吹越満、モデル:住友銀行名古屋支店長 小川)の姿が。

案の定質問を行いそれはドブに金を捨てるようなものだと難癖をつける支店長。

それに対して山梨は切り返します。

西国さんはメインバンクの1つですよね。

メインバンクなら窮地の時こそ力になるべきでは。

あなたは、メインバンクの支店長であるにもかかわらず、「機屋(はたや)には貸せても鍛冶屋には貸せない」とおっしゃったそうですね。

私に言わせれば、銀行家の風上にも置けない人間だ。

これは強制ではありませんので、ご不満ならばメインバンクといえどもご協力頂かずとも結構です。

どうぞすみやかにお引き取り下さい。

お引き取り下さい。

出ていきなさい!

移動の汽車内で近藤経理部長の急死の話を聞いていた山梨の熟慮しますはここにつながったのですね。半沢直樹では、悪役大和田常務として”顔芸”を楽しませてくれた香川照之の爽快な切り返しが印象的でした。

おわりに

後半でも人員整理をめぐる石山と三宅光男(俳優:高橋和也、取締役総務部長)の社長に隠れての動きや、佐一郎の断腸の思いでの決断など胸の痛くなるストーリーです。

ボロボロ涙するようなものではありませんが、目頭が何度も熱くなるとともに、企業をコンサルティングする重責も改めて感じました。

▼2017年3月に放送されたリーダーズ2も7月28日にDVD発売されるそうです。製造と販売が時に対立しながらも同じ目標に向かっていく話のようで、早く観たいです。

このブログを書いている人
電子書籍「システム導入のためのデータ移行ガイドブック」著者。 新卒から外資系コンサルティングファームに所属。15年に渡り販売物流、特にCRM領域のコンサルティングに従事。 100名を超えるプロジェクトのPMOなど全体を推進していく役回りや、ユーザ企業への出向を通じた実務経験を持つ。

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