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TOC/CCPMのカギになるODSCの基本を解説(書評:マネジメント改革の工程表)

ザ・ゴールのTOC(Theory Of Constraints, 制約条件の理論)はさまざまな領域に応用されています。これをプロジェクトマネジメントに応用したのがCCPM(Critical Chain Project Management、クリティカルチェーン)です。

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クリティカルチェーンとは、タスクの実行順という制約条件に加えて、その人しかできないタスクがあるようなリソース制約も加味した作業の流れのことです。

本記事は、マネジメント改革の工程表(著者:岸良裕司)という本の紹介を通して、CCPMの考え方や、根底にあるODSC、べき虫やくれない虫といった大企業病に潜む虫、それらを解決する方法を紹介します。

最初にクイズ:大企業にひそむこれらはどんな害虫?

本書では大企業にひそむ数々の害虫が紹介されています。

どんな虫か見当つきますでしょうか?

見えないのは現場?経営の考え?

企業では日頃から多くのプロジェクトが行われています。

これらのプロジェクトをどうマネジメントし成功に結び付けるかが経営の成果を決める、と言っても過言ではありません。

一方でよく聞くのが

という経営の声と、

という現場の声です。

これらをザ・ゴール2で紹介された思考プロセス技法の、「クラウド」で表現すると以下のようになります。

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儲け続けるというゴールは共通していますが、そのやり方について対立が生じています。

CCPMを簡単に言うと、ODSCの共有/サバなし計画/バッファ可視化

本書で紹介されるCCPMの考え方を要約すると以下のようになります。

これらの実践により全体最適の意識が高まり、上下や部門間の信頼関係が改善していくというものです。

参考:http://www.manaslink.com/wp-content/uploads/4423c07ed0a1e4fb104a2ad5cbebe619.pdf

成功しているプロジェクトは実践しているODSC(目的、成果物、成功基準)のすり合わせ

Objective(目的)

最初に目的を明確にします。同じプロジェクトでも関心や目的が同じとは限りません。みんなでワイワイガヤガヤと話し合い、ワクワクするような目的を議論していきます。

目的を明確にする意味は、プロジェクトに存在するさまざまな役割や責任をつなぎあわせるところにあります。経営スローガンを現場の活動とつなげて初めてプロジェクトが一つの目的に向かって進んでいくことができるようになります。

Deliverable(成果物)

目的達成のために具体的に何を成果物としてつくるのかを明確にします。システムだけで本当にいいのでしょうか?標準化したい業務手順や評価ルールも必要あれば成果物として定義します。

Success Criteria(成功基準)

これまでにすりあわせた目的と成果物を具体的に測定できる言葉として成功の定義を明確にします。

たとえば、商談の滞留時間を半減する、といったプロジェクト成功の基準を設けておきます。

改革の工程表 成功の極意18をチェックリストとしてみてみよう

本書でコラム的に挿入されている18の極意を一覧します。

そのまま掲載するか迷いましたが、ちょっと意外な言葉や当たり前すぎるものが多いため、真意を知るためには書籍を見て頂く必要があります。

一度読まれた方であればチェックリストとして参照することが可能です。

  1. あと何日は、報告をさせるのではなく、聞きに行く
  2. 報告会を会議にする
  3. バッファの気持ち:青は安心、黄色で安心、赤はさらにもっと安心
  4. 成功基準に魂のこもった言葉を入れる
  5. 目標は、高いほうが成功確率は高まる
  6. ファシリテーターは何もわからない人が良い
  7. タスクの作業はわかりやすく
  8. 他人の脳みそを使う
  9. うまくやるコツ
  10. 声に出して読む
  11. 「木を見て森を見ず」に陥らないタスクの数にする
  12. サバ取り不要の秘技:ゆとり創造型「科学的サバ取り段取り」
  13. 現場を守るためにサバ取りをする
  14. 組織を超えたチームワーク
  15. 工程表の作成は最初はむずかしいが次からはカンタン
  16. 困ったときにはODSC
  17. 厳しい局面ほどクリティカルチェーンを使うべし!
  18. コミュニケーション!コミュニケーション!コミュニケーション!

おわりに

CCPMは改革を成功させるのに理想的で、必要不可欠な考え方と思います。経営者の判断でCCPMを取り入れられることになり、本記事を参照している方もいらっしゃるかもしれません。

考え方は理解できても、多くの社員の意識を変え、見積もり能力などスキルを向上させるには時間がかかります。

また、計画そのものが破たんしている場合はいくらこうした管理をしても挽回はできません。適切な資源の配分と期間はCCPMの運用とは関係なく必要です。

とはいえ、著者が称するように改革を「ReCreation」ととらえ、再度創造しなおすこと、そして楽しく明るくやりがい・はりあいのある明日へ向かっての活動とすることには賛成です。

この本を手に取られた皆さんの関わる改革が楽しいものになれば幸いです。

 

ザ・ゴールのTOCを営業やマーケティングに応用したのがザ・キャッシュマシーンです。

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mhisaeda

電子書籍「システム導入のためのデータ移行ガイドブック」著者。

新卒から外資系コンサルティングファームに所属。15年に渡り販売物流、特にCRM領域のコンサルティングに従事。 100名を超えるプロジェクトのPMOなど全体を推進していく役回りや、ユーザ企業への出向を通じた実務経験を持つ。

このブログでは、自身がかき集めた知識や経験を共有する。クライアントへの提案やソリューション開発に直結しないガラクタのようなもの。将来再利用する自分のために。同じような悩みを抱える誰かのためにブログ「元外資系コンサルのガラクタ箱」を運営。

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