ソニーが2004年5月にグループ共通のサプライチェーン管理(SCM)システムを稼働させた時の日経コンピュータ記事を引用します。13年前の話ではありますが、生産・販売・物流の基幹業務を変え、システムを刷新する規模感として参考になる事例かと思います。
日経コンピュータ記事の抜粋リンクはこちら
グループSCMシステム(CLOVER)概要
※日経コンピュータからの引用です
- システムの概要
- 生産・販売・物流の業務を支援するサプライチェーン管理システム。
- 需要予測や生産計画、納期回答、配送計画などの機能を備える。
- ソニーが手掛けるパソコンやテレビ、デジタル・カメラ、オーディオ製品などコンシューマ製品を対象とする
- プロジェクト期間
- 2002年2月から2004年5月まで2年4か月
- 稼働開始日
- 2004年5月7日
- 開発費用
- 280億円(ハード/ソフト費用と開発費用の合計)
- 利用者数
- ソニー
- ソニーイーエムシーエス(生産子会社)
- ソニーマーケティング(販売子会社)
- ソニーサプライチェーンソリューション(物流子会社)
- の4社を合わせて約5000人が利用
- 開発言語
- Java。
- ソニーとソニーグローバルソリューションズが共同で策定したJavaアプリケーション開発標準を利用。
- 会計システムにはSAPジャパン製ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を適用
- 採用したハードウェア
- UNIXサーバーとWindowsサーバーを合わせ100数十台導入。
- メーカー名や機種名は公表せず
- 開発パートナー
- ソニーのシステム子会社「ソニーグローバルソリューションズ」ほか約10社
- ピーク時は600人の人員を投入した
- IT子会社内で100人優秀なSEを集めて開発
- ソニーのシステム子会社「ソニーグローバルソリューションズ」ほか約10社
- 新システムの導入後に期待する効果
- 4社合算でオペレーション・コストを年間約140億円削減する
- さらに年間在庫コストを約30%減らす
2000年初頭にソニーが抱えていた業務課題「納期回答」
大手量販店(なかには連結売上高1兆円に迫る会社も)は、時間単位で納期回答を求めてくるのに対し、ソニーは日単位でしか回答できないことが多かった。
納期を素早く回答するには、販社が持つ在庫情報だけでなく、生産スケジュールや工場在庫、物流状況をタイムリーに把握する必要があった。
4社で新しい業務プロセスを議論する上での基本ルール
バラバラに進んでいたプロジェクトを統合し4社での検討が始まった時の基本ルール。これらは大筋合意されていたが、業務プロセスの細部を詰めるのは大変だった。
- 販売会社に対し、日時単位での納期回答と製品納入を実現する
- EMCSが製品の在庫責任を負い、社内取引を廃止する
- 工場から製品を直接配送して、納品スピードを高める
プロジェクトを進める上で苦労した点と対策
- 各社の考え方が違って議論がまとまらない
- 共同体制を立ち上げた
- 有識者がノウハウをメンバーに伝授していった(例:VAIO向けSCMシステムで得た在庫調整などのノウハウ)、結果メンバーの発想が変わっていった
- 各社が使っている用語も大きく異なる(例:製販)
- プロジェクト専用Webサイトでマニュアル、スケジュール、用語、マスターデータなど情報参照を可能にした
- システム仕様書の記述方式として、「アルファベットの大文字/小文字、半角/全角スペースに細心の注意を払って、記述ルールを統一してほしい。記述方法がバラバラな仕様書は受け付けない」などと指示。同社で前例がないほど品質に厳しいプロジェクトだった。
- 要件漏れによるトラブルがテストで続出
- 販社から生産に移管する返品業務(廃棄手続きから経理処理まで)がきちんと規定されず、新システムに機能が盛り込まれていなかった。
- 絶対にトラブルは許さない。セーフティ・ファーストの判断で、4か月の稼働延期を決意した。
- 延期期間中は現新両方に業務データを入力し、業務を正しく遂行できるかや3000種類に及ぶ伝票の数字突合せ(伝票道場と呼ばれた)を行い検証した
おわりに
考察も何も含めない引用記事ですが、類推見積を行う際、類似プロジェクトを進める際の考慮事項が参考になれば幸いです。