本記事では、SCMの一部としてのSCP、またSCMの進化形とされるS&OPについて紹介し、違いを整理します。
SCM(Supply Chain Management)とは
以下の記事に詳細書いていますが、原材料の供給者から最終需要者に至る業務プロセスを、一つのビジネスプロセスとしてとらえ直し、
企業や組織の壁を越えてプロセスの全体最適化を継続的に行い、製品・サービスの顧客付加価値を高め、企業に高収益をもたらす戦略的な経営管理手法です。
SCP(Supply Chain Planning)とは
サプライチェーンプランニングは、各工程、在庫に対する最適な生産計画や補充・調達計画を作成するものです。
SCM(サプライチェーンマネジメント)を計画系と実行系に大別すると、SCPは計画系に位置します。
PSI表(生産Production, 販売Sales, 在庫Inventory)という、拠点別、品目別の需要、供給(生産)、在庫量を可視化し、必要な量をシミュレーションします。
SCPのサブモジュールとしては以下のようなものがあります。
- 需要管理モジュール (需要予測)
- SCP Optimizer (計画立案)
- スケジューリングモジュール(生産側に連携)
- ATPモジュール (納期回答)
需要管理モジュールでの需要予測をもとにSCP Optimizerで計画立案を行います。その結果を踏まえて、生産のスケジューリングモジュールに連携したり、ATP(Available To Promise)モジュールを通じて納期回答を行います。
この機能の核となるのは過去の販売実績などに基づき需要を予測する機能です。しかしながら、一時期流行った自動最適化計算は影を潜めています。人間の判断と利害調整は避けられないからです。
S&OP(Sales & Operation Planning)
S&OPは販売から生産・調達までをつないで、サプライチェーン上の計画・情報連携を行うことです。SCM・SCPがモノを管理するのに対して、S&OPはカネも含めて管理するのが特徴です。
日本では2000年代にはあまり聞かなかった概念ですが、1988年に既に発表されており、ERPやSCMよりも古い歴史があるようです。欧米では普及済の需給マネジメントの考え方です。
以下の書籍では、S&OPを「PSI(数量)と整合性のとれた金額(利益)ベースでの最適化に向けた経営層を巻き込んだ意思決定プロセス」と定義しています。
日本の現場では数量ベースでボトムアップが多いのに対して、S&OPは金額(利益)をベースにしており、経営層からのトップダウンプロセスということで取り入れにくかったのではと考察されています。
しかし、2009年のリーマンショックに代表される市場環境の急激な変化や東日本大震災などを踏まえ、数量主体ではなく金額視点でのサプライチェーンマネジメントが求められるようになったのです。
まとめ
SCPとはSCMを計画系と実行系に分けた時の計画系に相当する機能です。
S&OPはSCMが生まれる前から存在した需給バランスをとるプロセスです。
経営に貢献するSCMを考えるとS&OPと重なる部分が増えていくように思います。