クックパッドほど立派ではなくてもレシピのようなものを投稿できて、それを参照できる簡単なアプリを開発したいとします。Web系の開発会社に見積もりを依頼すると、数百万、多くても500万と回答が来ます。
一方で、企業のCRMシステムを置き換えたくて、営業マンが活動日報を簡単に登録できて、上司がそれを参照できる簡単なシステムを開発したいとします。ベンダーやコンサル会社に見積もりを依頼すると、1億円と回答が来ます。それも要件定義から総合テストまでで、移行やトレーニングは対象外、という前提つきです。
この差はどこから生じるのでしょうか。
開発人件費の内訳比較
以下の表は、Webサービスと大手CRMシステムの人件費の比較です。開発体制が3人と5人なので大きな違いがないのに、なぜここまで総額に差が出るのでしょうか。
まずは総工数が違います。
Webサービスは9人月でできているのに対して、大手CRMは60人月かかっています。
期間も6か月と12か月で2倍です。
さらに関与度は、Webサービス側が50%なのに対して、大手は100%のフルアサインです。
最後に月額の平均単価も違います。ちょっとプログラマーに月100万は極端かもしれませんが、コンサルファームのパッケージ担当だとこれぐらいになることもあるので、目安として設定しました。
総工数の違い
単価や関与度はさておき、総工数と期間に大きな差が生じるのは開発するシステムの特性によるところが大きいと思います。
いくらプロトタイプなアプローチを採用したとしても、新しい業務を考える上で現状業務や現行システムの仕様を調査し、整理する工数は避けられません。
要件定義やその準備のためにユーザ企業内の工数やスキルだけでは足りず、開発ベンダーやコンサルティング会社に求める支援工数が含まれています。
また、その後の設計への落とし込みも、要件定義書と齟齬がないようにそれぞれ設計書を作成し、レビューを経て開発に進みます。
プログラムが出来上がった後のテスト工程も多くの工数と期間がかかります。関連システムとの結合テストや実業務や障害、負荷を想定した数々のテスト。導入のためのユーザトレーニングのための環境提供やサポートも含めると、どうしてもプログラムの開発以外に多くの作業が発生します。
これだけだとなんだか企業内のシステム導入はとても非効率に感じられます。その是非は私には判断できないのですが、企業の業務は消費者向けのサービスとは異なり、様々な部門での個別事情に応じた業務をカバーする必要があります。そのためそもそも機能を絞り込むことができない事情はあるようには思います。
(日本はこうした個別仕様が多いがゆえにパッケージ適合率が上がらないという課題もありそうです)