元外資系コンサルのガラクタ箱

販売管理システムの設計ポイントと業務知識が詰まった1冊

以前、販売管理システムの機能と業務を知るのに「グラス片手にデータベース設計 販売管理システム編」が役立つと紹介しました。

本記事では以下の2点を具体例として紹介します。

https://mhisaeda.com/archives/162

設計時の考慮ポイント

例として見積システム構築のポイントを挙げます。ビジネスでは注文前に見積を作成するのが普通です。顧客に対して何をいくついくらで売るかを管理するため、受注と似た画面になりますが、まだ受注前ということを踏まえて設計する必要があります。

  1. 顧客がマスタ化されているとは限らない
  2. 商品がマスタ化されているとは限らない
  3. 過去の価格を参照できるようにする
  4. 小計や空白、値引などのわかりやすい表示が必要
  5. (見積自体を)参照、再利用できるようにする

これらは、業務を知っているクライアントにとっても当たり前、また複数プロジェクトで構築経験のあるコンサルタントにとっても当たり前です。しかし、販売領域のシステムを扱ったことのないコンサルタントにとっては、決して当たり前ではありません。

ここで受注同様に、顧客や商品を”必ず”マスタから取得する設計にすると、レビュー時に指摘を受けて修正することになってしまいます。雑顧客(ワンタイム顧客)や雑商品(ワンタイム商品)という形で、マスタではなく見積トランザクションで情報を保持する設計が必要になります。

マスタ化するほうがデータはきれいに保てますが、取引のない顧客や定まってない候補商品まで管理していたらメンテナンス工数がかかりすぎてしまいます。

業務知識

五十日

五十日(ごとうび、ごとび)とは、5日や10日といった5の倍数の日のことです。日本ではこの日を締日として集金する商習慣があります。欧米企業では請求日(Invoice Date)から30日以内というように取引単位での支払条件となるので”締め”という考え方が一般的ではなく、パッケージ導入の際にカスタマイズ対象になってきます。

赤黒

金額データを訂正する際には同じデータを直接上書き更新せずに、別行でマイナスデータを登録し対応します。これは通常の伝票を黒インク、逆仕訳用の取消伝票を赤インクで書いたことが由来です。

物理削除、論理削除、有効期間

組織名というのは組織変更のたびに変わるものです。ある部署が統合された場合、その部署マスタのデータは使われなくなるので、データベースから削除してしまう。要件としてはありえます。完全に消してしまうことを物理削除といいます。

一方で、削除フラグという項目をもっておき、フラグに1が立っている(逆に削除されてないデータには0を入れます)場合は削除されたデータ(現在は使われていない、もしくは誤登録されていた)を示します。

この形でデータを持つことのメリットは、新規で見積データを登録する際の部門名としては、削除データを除いたマスタから選択させつつ、過去の見積データの部門項目には、削除データから名称を引っ張ることができる点です。

さらにオンオフに加えて有効期間を持たせる方法もあります。3月31日までは旧部門名で、4月1日からは新部門名を適用したい場合です。このように有効期間From、Toを持たせることで、事前にマスタ登録を行うことも可能になります。

クライアントの信頼を得るために

こうした設計時の考慮ポイントや業務知識は、要件定義や設計を進める中でクライアントからヒアリングし習得していくことも可能です。しかし、専門家としての信頼を得るためにもなるべく事前にインプットしておきたいところです。

そのためにも「グラス片手にデータベース設計 販売管理システム編」は役立つ1冊です。

▼販売物流管理についてはこちらの本もお勧めです。

図解でわかる販売・物流管理の進め方

5分でわかるザ・キャッシュマシーンまとめ

mhisaeda

電子書籍「システム導入のためのデータ移行ガイドブック」著者。

新卒から外資系コンサルティングファームに所属。15年に渡り販売物流、特にCRM領域のコンサルティングに従事。 100名を超えるプロジェクトのPMOなど全体を推進していく役回りや、ユーザ企業への出向を通じた実務経験を持つ。

このブログでは、自身がかき集めた知識や経験を共有する。クライアントへの提案やソリューション開発に直結しないガラクタのようなもの。将来再利用する自分のために。同じような悩みを抱える誰かのためにブログ「元外資系コンサルのガラクタ箱」を運営。

カテゴリー

モバイルバージョンを終了