新しい部署へ異動した時や、社内プロジェクトにアサインされた時には、これから自分が“何を”やる必要があるのかを確認すると思います。
しかし、その”何を”やるかは、土台となる役割や目標によってがらっと変わる可能性があります。
本記事では、ITILというシステム運用で用いるフレームワークを使って“なぜ”それをやる必要があるのかを明確にする方法を紹介します。
ITILについてはこちらの記事を参照ください。
また、以下の本の解説も多く引用して記事を書いています。さらに詳細を知るにはぜひ書籍を読まれることをお勧めします。
サービスストラテジとは
サービスストラテジはサービスを提供する部門やチームが判断や行動の基準となる戦略を策定するステージです。以下5つのプロセスに分かれます。
- ITサービス戦略管理プロセス
- サービスポートフォリオ管理プロセス
- 財務管理プロセス
- 需要管理プロセス
- 事実関係管理プロセス
なじみのない用語ですが、ひとつひとつが新しい部署の仕事をやるための”なぜ”を明確にしてくれます。言葉を変えながら一つひとつ紹介します。
- ITサービス戦略管理プロセス →ビジョンと目標を確認する
- サービスポートフォリオ管理プロセス →作業の過不足と優先度を確認する
- 財務管理プロセス →作業にかかるお金の是非を確認する
- 需要管理プロセス →作業負荷の過不足を確認する
- 事実関係管理プロセス →信頼関係を築く
ビジョンと目標を確認する
ITサービス戦略管理プロセスは以下のプロセスを通じて、組織が目指すビジョンと目標を明確にします。
- 戦略的アセスメント
- ITサービス戦略の作成、評価、選択
- ITサービス戦略の実施
- ITサービス戦略に対する測定と評価
例として社内Webサイトを運営する場合を考えると、Webサイトのコンテンツを作成し公開するというタスクの前提として、「ナレッジマネジメントを盛んにして個人スキルの底上げを図る」、「ビジネス目標や方針の共有を行い組織の風通しをよくする」といったビジョンがあるはずです。仮に文書に書かれたものがなくても、それを必要と認識し立ち上げを行った人がいるはずです。
また、ビジョンの達成状況を評価できる目標もあるはずです。「実行されたプロジェクトの95%は共有されていること」、「毎月1回はトップからのメッセージを発信する」などです。
本当にビジョンと目標が明確になっていないようなら、アサインした上司に早急に確認することをお勧めします。指示されたタスクを完了しても顧客や上司の目標値に届いていなかったり、的外れな対応になってしまう危険性があります。
作業の過不足と優先度を確認する
サービスポートフォリオ管理では以下のプロセスを通じて、作業の全体像と各作業の優先度や今後の方向性を確認します。
- 定義
- 分析
- 承認
- 制定
サービスポートフォリオとは、サービスカタログ(提供するサービスの一覧)に対して、優先度や方向性(継続、強化、合理化、廃止)を定めたものです。これを作成し、顧客と合意することで過不足や優先度違いを防ぐことができます。
社内Webサイトの例でいくと、現状のWebサイトには部門長からのメッセージと組織図だけが掲載されているとします。しかし実は各課の提供サービス内容を共有してほしいというニーズが前々からあがっている可能性もあります。逆にパッケージソフトの紹介ページはインターネットでも十分情報が集められるため、わざわざ調べて掲載することは不要になっている、などです。
作業にかかるお金の是非を確認する
財務管理プロセスでは、サービス提供にかかるコストを可視化し、需要や投資対効果に見合ったコントロールを行います。
- 費用内訳を明確にする
- 投資対効果を明確にする
- 受益者に応じた課金の仕組みを取り入れる
- 実績管理を行う
社内Webサイトの例でいくと、海外グループ会社用に英語版ページも用意しておりその翻訳を業者さんに委託していました。しかし英語版ページへのアクセス数は0が続いている場合、委託はやめて必要なもののみ社内メンバで対応したほうがよい、などです。
作業負荷の過不足を確認する
需要管理プロセスでは、現在の需要を把握し、将来の需要を予測することで適切なキャパシティでサービスを提供します。
- 過去の需要を把握する
- 未来のイベント(繁忙期や業務規模拡大)を把握し需要を予測する
- 必要なリソースやキャパシティを見積もる
- キャパシティコントロール(サービス増強)や需要コントロール(顧客側での工夫)による対応策を顧客と合意する
社内Webサイトの例でいくと、全社一斉のPC交換などで特設ページへのアクセスが集中する場合は一時的にサーバのリソースを増強することによる費用増を承認してもらう、などです。PC交換時の移行作業をWebサイトチームで請け負う(実際には考えにくい例えですが)にあたり、負荷が集中しないよう1日あたりの対応件数を定めて予約を受け付ける方法が需要コントロールです。
信頼関係を築く
事実関係管理プロセスはサービスストラテジに限らずITILの全ステージで発生するプロセスです。顧客の要望は絶えず変化していくため、タイムリーに柔軟に対応が必要です。そのためにも、信頼関係を築き、要望の変化を伝えてもらうことが重要です。
おわりに
いかがでしょうか。異動先の業務を引き継ぐのにストラテジーとは少々大げさに感じるかもしれませんが、組織のビジョンや目標に合わせることは顧客の満足にも自組織への貢献にもつながっていきます。本記事で紹介した5項目が役に立てば幸いです。
次にこちらの記事はいかがですか。